「心房細動は身近な不整脈」
小出内科クリニック 小出 昌信医師 
 
 心臓がドキドキしたり、胸が苦しくなったり、動くと息切れをしたことはないでしょうか。このときに疑う病気の一つに「心房細動」という不整脈があります。
心臓は、洞結節と呼ばれる場所から発せられた電気刺激が心房、心室の順に伝わることで、規則正しく拍動しています。心房細動では、洞結節の統制が効かなくなり、心房が無秩序に振えるように動き、そこで作られた一分間に数百回の不規則な電気刺激の一部が心室に伝わります。心房細動は数日以内に自然に止まる「発作性」と自然には止まらないか治療しても止まらない「持続性」に分けられます。
 心房細動により好ましくない病態が二つあります。
ひとつは心不全で、心房から心室への電気刺激の通過が多く、頻脈になり全身に必要な血液量が得られない状態です。
もうひとつは血栓塞栓症で、心房で血液の固まり(血栓)ができて全身に運ばれ血管を詰めてしまいます。特に脳の血管を詰めると脳梗塞をおこし、麻痺や失語症あるいは死亡に至ることもあります。
 治療として、(1)抗不整脈薬や電気ショックで、心房細動を止めて正常な心拍にする(除細動)、(2)主に抗不整脈薬(一部にカテーテル焼杓術や手術)を使った心房細動の再発予防、(3)ベータ遮断薬やジギタリス製剤を使って、心房細動のまま不全にならないように心拍数を適切にする、(4)血栓症の予防のため、血液を固まりにくくする薬(ワルファリン)を使うことが挙げられます。ワルファリンは、効果と副作用の出血の危険性を血液検査で確認して薬の量を調節する必要があります。持続性心房細動や繰り返す発作性心房細動では(3)と(4)の治療が大切です。
 心房細動の背景として、弁膜症、心筋梗塞、高血圧などがありますが、年齢も大きな要因です。七十五歳を超えると十人に一人は心房細動を持っており、高齢化社会となった現在では、心房細動を克服することが大きな話題となっています。
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